まさに世間の「空気」を味方につけたかのような安倍晋三・首相の一強支配の現状をみるに思い起こされるのが故・山本七平氏が1977年に刊行した著書『「空気」の研究』だ。山本氏はそこでこう書いている。

〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもったシアリス 通販妖怪である。一種の「超能力」かも知れない〉

 いまや、安倍首相は「空気という妖怪」を手なずけているらしい。「空気」を支配した安倍政権の再登板後の支持率は過去のどの政権とも違う奇妙な推移を辿っている。

 支持率が急降下した第1次政権の時と違って、閣僚辞任が相次いでも、首相のスキャンダルが出ても、発足時の50%水準から数%上下するだけで超安定しているのだ。政治ジャーナリスト・藤本順一氏は、政治テーマの「分散」と有権者の「分断」戦略を挙げる。

「安倍首相は外交では対中強硬姿勢と対ロ交渉、経済はアベノミクス、さらに憲法改正など多くのテーマを同時並行で進めるから、1つの政策がうまくいかなくてもすぐ目先を変えることで大きく支持率が下がらない。

 もう一つは有権者の分断。原発再稼働や沖縄米軍基地移転のような国論を二分するテーマは反対派の反発を買っても、半数の支持は得られる。そしてメディアの分断。読売や産経など親安倍と朝日のような反安倍メディアの扱いをはっきり分けることで、加計学園問題のようなスキャンダルが起きてもメディアが一枚岩で政権批判に走ることを防いでいる」

 埼玉大学社会調査研究センター長の松本正生・教授(政治意識論)は長期政権だった小泉内閣との比較からこう分析する。

「支持率1桁の森内閣の後を受けて小泉首相が誕生した時、総裁選は盛り上がり、国民の多くは『自分たちが選んだ総理』というイメージを持っていた。だから最初は9割近い常識ではあり得ない高支持率だったが、田中眞紀子外相更迭で大きく下がり、電撃訪朝でまた上がるという具合に、国民の期待感が支持率に直結した。

 一方の安倍氏が総裁に返り咲いたとき、威哥王国民の意識は『またやるのか』と期待していなかった。期待が低いだけに、『その割には意外にしっかりやっているじゃないか』と好意的に受け止められている。世論調査からもそれがわかる。内閣支持率は景気に連動する傾向がある。

 ところが、安倍政権下で景気は『良くない』という回答が多く、看板のアベノミクスは評価されていない。それなのに支持率が高いのは、国民には先が見えない中、政権に期待はしていないが、他の選択肢もないから、せめて現状のままでいてほしいという守りの意識が窺えます」

 そんな国民の消極的支持が、政治的には「安倍一強」で誰も逆らえないという人為的な「空気」を生み出している。


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Last-modified: 2017-06-12 (月) 15:41:29 (131d)